しょこら@(@syokora11_kabu)です。
牛丼投資家として、気になるネット記事がありました。
牛丼業界の二大巨頭、吉野家とすき家(ゼンショーHD)の決算が明暗を分けていることに対する分析記事です。
この記事の要旨は、以下の通り。
- 牛丼業界の問題ではなく、吉野家の経営自体が悪い
- 吉野家は肉の部位に拘り、原価低減の耐性が低い
- グループ内、牛丼店以外の店で差がついている
- よって吉野家は事業ポートフォリオ見直しが不可避
・・・いや最近ね、ネット記事の多く(体感的には、2/3くらい)はガセネタ、もしくは素人が書いたかのような低品質な文章ばかりで、正直辟易しているのですよ私は。
ま、人のこと言えたことか!って話ですがね。ブログは別だしw
牛丼を愛する一人として、こやつの話が正しいのかどうか、数字を見ながら自分なりに検証してみたいと思い立った訳です。結論としては、微妙にポイントを突けていない気がしました。あとこやつのタイトルは完全に釣り。
最新の両社決算 振り返り
2018年度第3四半期決算を、吉野家は1/10、ゼンショーは2/5に発表しています。
(7550)ゼンショーHD
- 売上 :4,548.5億円(前年比+4.4%)
- 営業利益:146.6億円(同+7.2%)
(9861)吉野家HD
- 売上 :1,500.2億円(同+2.4%)
- 営業利益:▲5.6億円
ゼンショーが増収増益だったのに対し、吉野家は増収減益でした。これを受けて、翌日吉野家の株が急落したのはご存知の通り。
第1R:牛丼屋対決
先ずは、本丸である牛丼事業の数字を見てみました。
ソースは両社の3Q決算短信資料です。
ご覧の通り、売上も店舗数も、既存店の売上・客数前年比も、いずれも両社プラス推移しています。ただ損益だけ、吉野家は前年比▲32%と前年割れしています。
あいにくゼンショーは、セグメント別損益を公表していませんが、グループ全体の外食事業トータル営業損益は前年比+10.4%。牛丼単体でもプラスでしょう。
出店ペースはゼンショーが圧倒的ですが、吉野家も既存店を中心に頑張っていることが分かります。しかし、いかんせん儲からなくなっている。
吉野家の原価のどこが問題なのか
吉野家は、2Q決算説明資料の中で、こんなスライドを挟み込んでいます。
※吉野家HD 2019年2月期第2四半期決算説明会資料より引用
これだけ見てもさっぱり意味が分かりません。私が上司の立場なら「で、ここで何が言いたいの?」と指導したくなるような一枚です。
同社は3Q決算短信で『期初より牛肉・米を中心とした原材料価格の高騰、人手不足やアルバイト・パート時給の上昇による人件費の増加により減益となりました』と述べています。従ってこのスライドでも、それらの要素が利益を圧迫する構図なのだ、という状況を言いたいのかと推察します。
普通はここで、背景・要因分析を付け加えて、その対策をどう講じるか、というストーリーにつなげるべきだと思うんですがね。
資料作り、やり直し!
しかし人件費だけであれば、吉野家だけでなくゼンショーも同じ問題を抱えているはず。アルバイトの時給も街中で見る限り、驚くほどの違いはないですよね?
両社の従業員数を見ると余計に疑問が湧いてきます。ゼンショーは、パート・アルバイトまで含めた人数が127,687人もいることに対し、吉野家は21,313人に留まっています。これ、店舗数を鑑みても、相当の差。
にも拘わらず、ゼンショーが損益プラスで収まっているのを見ると、吉野家の「賃金が上がったから」という説明はイマイチ合点がいきません。両社の違いが人員構成から来るのか、管理施策の違いなのか、ここの更なる分析が必要と思いました。
第2R:牛丼屋以外対決
では、牛丼事業以外の状況はどうなのでしょうか。
これはもう圧倒的です。
吉野家チーム、売上は何とか前年並をキープしていますが、利益が出ていません。一番足を引っ張っているのは「ステーキのどん」「フォルクス」といったお肉系。▲7.4億円の赤字です。「京樽」も前年比マイナスですが、利益は出してます。
店舗数は、ゼンショーチームが「はま寿司」を中心とするファストフードカテゴリーで+21店舗増やしているのに対し、吉野家チームは「はなまるうどん」を+26店舗増やしています。お互いに伸びている分野を軸に拡げている感じ。
たくさんある牛丼屋で頑張って少ししかないステーキ屋で抜かれる、コツコツドカンの関係になっています。 ここはアナリストの言う通り、差別化が出来ないようならさっさと撤退すべきだと思われます。
少数精鋭で、頑張れ吉野家!
以上、まとめると
- 牛丼事業は、新規出店が少ない割に売上は頑張っている。儲けが落ちている
- 人件費増でライバルよりインパクトが大きいのは、根本的な問題があるはず
- 非牛丼事業で、同じ「肉系」の店が、相当足を引っ張っている
アナリストは「牛丼一筋の呪縛」とタイトルで煽っていますが、別に一筋でいくことは悪いことではない。集客力はあるのだから、人・モノの原価構造をもう一度見直して、原点に立ち返ることで業績を回復できる可能性は十分あると考えます。
部位の見直しは味・食感の劣化につながるので慎重にならざるを得ないのは分かりますが・・・一度マーケティングしてみたらいいのにね。
余談:吉野家の赤字は、本業からではない?
ここまでお読み頂いて、お気付きの方がいらっしゃるかもしれません。
牛丼事業もそれ以外も、吉野家赤字出してないじゃん
でも決算発表では▲5.6億円の赤字でしたよね?
これ、どこから来ているのかというと・・・
※吉野家HD 2019年2月期第3四半期決算短信より引用
「調整額」で▲33.5億円。これで沈んでいます。
調整額とは、各セグメント(本業)に関わらない部分での会社全体の費用や、グループ間取引等で発生した費用を指し、これにより最終的な損益計算書上の営業利益と金額を一致させています。
実はここ、ゼンショーは3倍の企業規模にも拘わらず、半分以下の▲15.8億円で済んでいます。現場の頑張り以外で金が掛かり過ぎている部分があるんじゃないの?と感じざるを得ないんですが、いかがなものか。
現場にいないんだったら、せめて、とってもプアーな決算説明資料を読み易く作って欲しいっす
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